ブルーブラック2



「ごちそうさまでした」


食事も終わり、後片付けが済むといつもの指定席で二人はのんびりと過ごす。

百合香がソファにもたれかかる様にして床に腰を下ろすと智がソファから立ち上がった。


「―――今日真っ直ぐ帰ってきた理由」


上品に口元を弓なりにあげて智はそういうと、鞄の中から何かを取り出した。
それは百合香も知っているもの。


「あ―――!」
「色々あって渡しそびれてたんだ」


コトン、と硝子のテーブルに音を立てて百合香の目の前に置かれた“それ”は昨日まで嫌という程視界に入っていたオリジナルインクのボトル。

百合香は瞬きするのも忘れてそっとそのボトルを手に取った。


「これ・・・智さんが?」
「そう」
「・・・私に?」
「他に誰がいるの」


呆れたように優しい溜め息を吐いて智は言った。

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