ブルーブラック2

そのボトルを百合香はいつものように蛍光灯に透かして見るように見上げる。
褐色色のボトルからは正確なカラーがわからない。


「どんな色だろう」


驚いていた百合香の顔はすぐに満面の笑顔に変わった。
そんな百合香の横顔を智は満足そうに眺めているだけ。


「そんなに珍しい色じゃない」
「ん、でも智さんが作った世界に一つだけのインクでしょう?」
「一応ね」


ボトルを胸元まで下ろしてそれをぎゅっと握りしめると百合香は智を見てそう言った。
そして百合香もふと気が付いて、一瞬笑顔が消える。


「?どうかした?」
「あ、実は・・・私も」


そうして百合香はコトリと一度そのボトルをテーブルに置いて奥からいそいそと何かを持ってくる。

そして智の前に立つと、頬を赤らめて少し照れくさいような雰囲気でそっとその両手を広げて差し出した。


「さすがに色までは一緒じゃないとは思いますけど」


はにかんだようにそれを百合香は手渡すと、智は予想もしていなかったからかすぐに反応しないでただ手にあるボトルを見つめていた。


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