ブルーブラック2

「・・・智さん?」


百合香の呼びかけにやっと智は我に返って百合香を見上げた。


「ああ・・・いや、まさか百合香から同じように貰うとは」
「・・・このことですよ」
「え?」
「前に智さんが気にしていた金山さんとの秘密の話」


百合香は恥ずかしそうに視線を逸らして、自分も智から貰ったボトルを再び手にしてそれを見ながら続けた。


「オリジナルインクの名称。なかなか決まらなかったので・・・それで金山さんが“今度教えて”って言っていたんで、すっ・・・」


百合香が話し終える前に智は自分の元に百合香を引き寄せた。
ソファと智にまたがる様にして百合香は智の胸に収まった。


「・・・ありがとう」


智の胸に耳を充てて、その心音と共にありがとうという声が響いて聞こえる。


「私も、嬉しいです」


自分の胸の中から見上げて、未だに慣れずに照れながら笑顔を浮かべて嬉しいという百合香が智は物凄く愛おしかった。


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