ブルーブラック2

「あっ・・・あの、書いてみて、いいですか?」


その惹きこまれそうになる智の瞳に百合香はやっとの思いでそう言った。


「ああ。じゃあ俺も」


そう言って智の腕から解放された百合香は気付かれない位の小さな深呼吸を繰り返した。


カタン、と水を張った入れ物で二人はそれぞれの“桜”を綺麗に洗うと、今贈られたボトルの蓋をゆっくりと回しあける。

褐色色のボトルの中を覗き込んでも、正直まだどんな色なのかははっきりとわからない。

百合香はそのボトルにそっとペン先を浸してインクを吸い上げる。
その後静かに万年筆を持ち上げるとシルバーのペン先についたインクがどんな色かを少しにおわせる。


「あ・・ブルー系じゃないんですね」


そのペン先に幾分か付いているインクはどちらかと言うと暖色系だった。


「いつもブルー系が多かったから。こっちのはブルー系・・・?グリーンか」


智も自分のペン先から視線を外さずに百合香と会話をする。


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