ブルーブラック2
いよいよ気持ちが最高潮に高ぶる時。

軸を元に戻して手に納める。
そしてまっさらな用紙に向き合うと、百合香は自分の名前をそこに記した。

それと同時に智もさらさらと文字を書き連ねる。


「―――すごい、綺麗。淡いんだけど、薄くない。まるで―――」


百合香は“桜”を置いてそのインクで描いた文字を凝視した。


「こっちも珍しい色だな。深くてでも百合香が作っただけあって繊細だ」


二人は一緒に顔を上げて目を合わせて笑った。
そしてそれぞれの用紙を近づけて並べてみる。


「智さん、このインクの名前は?」
「・・・・春風《はるかぜ》」
「春風・・・!ほんとそんな感じ!」


百合香はその色も名称もすごく気に入っていた。

それはまるで春の空に舞う桜のような淡くて美しい桜色。


「なんだかとても心が柔らかくなる気がします、このインクで書いていると」


そう言って百合香はずっとその文字に釘付けだった。


「――こっちの名は?」


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