ブルーブラック2
(何かな、電話でもあったかな?)
百合香は何の気なしに折り畳まれたメモを開く。
しかし、すぐにそれを元に戻した。
「あ、そうだ神野さん。オーシャンの金山さんがセール前に一度来るみたいだよ」
「え?金山さんが?」
「オリジナルインク試作品と一緒に」
「ああ!楽しみですね!」
老舗文具メーカーのオーシャンと言えば昔から有名で、つい昨年百合香はそこの工場へ見学を兼ね出張へ赴いた。
そこでお世話になった一人が金山《かなやま》という歳上の男性だ。
彼は万年筆に詳しく、ペンドクターと呼ばれ、業界ではよく取り上げられる有名人でもある。
その金山が再び弐國堂だけのオリジナル商品について来訪してくれるという話だ。
手の中に納めたメモをそのままに、坂谷の話し掛けに嬉しそうに答えてから百合香はカウンターから離れた場所へ自然を装って移動した。
「····もう!」
つい口から出た独り言。
言葉とは裏腹に顔は正直で、目元と口元が綻んでしまう。
百合香は何の気なしに折り畳まれたメモを開く。
しかし、すぐにそれを元に戻した。
「あ、そうだ神野さん。オーシャンの金山さんがセール前に一度来るみたいだよ」
「え?金山さんが?」
「オリジナルインク試作品と一緒に」
「ああ!楽しみですね!」
老舗文具メーカーのオーシャンと言えば昔から有名で、つい昨年百合香はそこの工場へ見学を兼ね出張へ赴いた。
そこでお世話になった一人が金山《かなやま》という歳上の男性だ。
彼は万年筆に詳しく、ペンドクターと呼ばれ、業界ではよく取り上げられる有名人でもある。
その金山が再び弐國堂だけのオリジナル商品について来訪してくれるという話だ。
手の中に納めたメモをそのままに、坂谷の話し掛けに嬉しそうに答えてから百合香はカウンターから離れた場所へ自然を装って移動した。
「····もう!」
つい口から出た独り言。
言葉とは裏腹に顔は正直で、目元と口元が綻んでしまう。