ブルーブラック2
その時の百合香の表情は、初めて見るものだった。
怒りを感じる訳ではない。でも、ただ宥めるような慈悲を感じることもない。
真正面に居る自分を見ているようで、どこか遠くを見ているような――
「・・・勿論競争が必要なことだってあるとは思うけど。生田さんが思ってることには意味がないんじゃない?」
「・・・・」
「って、そう気付いたのは私も最近なんだけどね」
次に見た時の百合香の表情はいつもの穏やかなものだった。
その瞬間、美咲は自分でも気付かないうちに頬に涙が伝った。
「―――ごめん・・・なさい」
それは本当に小さく掠れている声。
更衣室から響く声でかき消されてしまいそうな位、細い声で。
「は、初めて・・・だったから――こんなにも思い通りにならない・・・ことが―――」
肩を上げて美咲が言う。
それを見て百合香は少しの間の後に言い返した。
「そんな言い訳で許せる訳、ないでしょう?」