HERO
「美亜」


低い声で、私を呼ぶ。


流れた涙を、あったかい指で掬う。



今度は乱暴にではなく、優しく、本当に優しくキスをした。



いつもこうだった。


始まりから終わりの間に、さっきみたいに痛めつけたり、今みたいに壊れ物を扱うようにしたりする。



私はそれが、怖くて仕方なかった。


自分を見失いそうで。



散々怖がった後に優しくされると、妙に心が落ち着いてしまうから。



「おかえり、美亜」



優しく笑うそいつは、悪魔だ。


私を狂わせる悪魔。



二回目の優しいキスに、私は自ら応えた。


ほら、これが怖いんだ。
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