いきなり王子様


今日、井上社長から聞かされた竜也と美散さんの関係は、予想以上に私の心に重く響いてしまった。

二人の間には、強い何かがあるだろうと思っていたけれど、それは決して恋愛がらみの何かではなくて、二人に大きな判断を委ねる苦しい過去だった。

『親父は、竜也と結婚しないなら親子の縁を切る。そして、女の子を養子に迎えてその女の子と竜也を結婚させるとまで言い出したんだ。
竜也の義兄である槙尾さんとの繋がりがどうしても欲しい親父は、その時にはもう狂っていたんだな。自分の娘を犠牲にしてでも、自分の欲を満たしたい。
俺らが知っている、子煩悩で家族想い、工場に誇りを持っていた親父は消えていた』

井上社長自身、苦しげな顔で呟いていた。

多分、言わずに済むのなら、言いたくなかったに違いないだろうけれど。

『美散は、好きな男……今の旦那だけど。がいたから、親父との縁を切って家を出たんだ。まあ、そう言ってしまえば簡単だけど、修羅場というものを俺は初めて見たな。
で、竜也は竜也で美散を恋愛感情を持って好きになる事はないと、親父にはっきり言って』

そして、井上社長のお父さんは、株で損をしたわけでもないのに、更に更に儲けを増やそう、という気持ちが強くなり。

『会社の金にまで手を出そうとして、社長職を解任された。
未然に防ぐ事ができたのは、会社の重役を務めている人達全てが工場時代からの親父の仲間で、親父の変化に気づいて犯罪者にしたくないと、泣く泣く解任したんだ。
それ以来、親父は人が変わったように無気力になってしまって。
今では施設で療養中だ』


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