いきなり王子様
「そ、それは、どうも、ありがとう」
朝っぱらから私の体温は一気に上昇。
竜也のこれまでの恋愛がどんなものだったのかは知らないけれど、私への甘い言葉には際限がない。
付き合い初めて数日で、見た目の淡泊さなんて竜也の本来の姿をかなり裏切っていると何度も実感させられた。
『それに、俺が奈々を好きになって、奈々に片思いして、奈々に気持ちを伝えて。で、付き合い始めた今でも、俺が奈々を追いかけてるんだ。
美散の事に限らず、俺の過去のあれこれに気持ちを荒立てても意味がない』
「俺が俺が、って言うけど、私だって、竜也のこと……」
今じゃ好きだし、かなり。
とはやっぱり口には出せず。
余韻の中に込めた想いを汲み取って欲しいなんて、思ってみたり。
とにかく、竜也みたいに自分の気持ちを甘い言葉に変えて露わにするなんてできない。
お互いの表情を交わせない電話でのやりとりは、私の照れた顔を隠してくれる一方で、照れて口に出せない想いを伝えることもできなくて。
「とにかく、えっと、だから。……今から、メール読んで、返事するから」
昨日竜也がくれたという未読メールのことを思い出して、呟いた。
昨日、色々なことを井上社長から聞かされて、私の受け入れキャパはオーバー。
逃げるように眠りについたせいか、メールにも気づかなかった。
何が書かれているのかわからないけれど、竜也がわざわざこんな朝早くから電話してくるくらいだから、大切な内容かもしれない。
「読んだら、ちゃんと返事するから、とりあえず、電話切ってもいい?」
『わかった。ちゃんと、返事しろよ』
“ちゃんと”という言葉にアクセントが置かれた気がしたのは気のせい?
『じゃ、晩にでも電話するから。あ、週末はどうするのか、考えておけよ』
工場の始業時間は本社よりも早い。
竜也はもうそろそろ出勤するから、と言って電話を切った。
通話を終えたスマホを片手に、夕べ届いているらしいメールを確認すると。
『ほんとだ、夜中にメールが来てる』
何が書かれているのかと、不安を少々抱えて、スマホをタップした。