いきなり王子様
欲しいと思った事なんて一度もなかったどころか、指輪そのものに嫌悪感も持っていた私なのに。
「私一人が指輪をするなんて、やだな。誕生日だって近いんだから、竜也も」
思わずそんな言葉も自然にこぼれた。
とくん。
私の思いつきを後押しするかのように鼓動は音をたてる。
そして、スマホをしばらく見つめた後、
『竜也の指のサイズを教えてくれたら、私のサイズを教えてあげる。
もちろん、左手薬指』
自分で作った文に自分で照れながらも、えいっと呟きながら、勢いに任せて送信。
恋人から指輪を貰う事を、あれほど避けていたはずなのに、そんな過去の気持ちはどこかにいってしまった。
おまけに竜也にも指輪をして欲しいと思う自分がこっぱずかしくもあり幸せでもあり。
「あ、男って、エンゲージリングなんてしないのかな」
単純に誕生日プレゼントとして、指輪を用意しようかな。
自分が貰ったこともない指輪を男性に贈るなんて、かなりハードルが高いけど、それでもやっぱり、竜也に枷を与えたい。
仕事の後、デパートにでも見にいこうかな。
あ、そういえば、ジュエルホワイトっていうジュエリーショップの話をよく聞くから、行ってみようかな。
今までの私なら思いもしなかったあれやこれやに心は沸き立って、とりあえずそんな気持ちを鎮めようとシャワーに向かった時。
スマホがメールの着信を告げた。
慌てて見ると。
『今まで指輪なんてつけたことがないからサイズは知らない。
週末、一緒に買いに行こうか。エンゲージじゃなくて、マリッジってことで』