いきなり王子様
『正論で何もかもが片付けば、恋愛なんて面白くもなんともない』
竜也が以前私に言った言葉だ。
それを聞いた時は、実感としてよくわからなかったけれど、竜也に惹かれてしまった今ならわかる気がするから不思議だ。
何もかも、そう何もかもが普通じゃない私たち。
突然遠距離恋愛をしようなんて、言われて、それからの数日を密に過ごす中で私の気持ちは一気に竜也に取り込まれた。
同期としての付き合いの中、色恋に発展するような気持ちなんてカケラも持ち合わせていなかったのに、竜也の想いの強さに気圧されるように私の全てを掴まれた。
とはいっても、竜也に流されて付き合い始めたわけでもないし、嫌々体を重ねたわけでもない。
二人の距離が一気に近くなって、一気に私は竜也を好きになって、普通なら考えられない展開の中、『マリッジ』なんて言葉を交わすようになった。
それだけの事だ。
そう、それだけの事。
出会って、お互いを知って、気持ちを告げて。
ゆっくりと思いを高め合って未来を語り、そして結婚へと動き出す。
そういう流れが世間でいう普通ならば、そんな普通とは違う、かなり速い動きを見せているだけで、なんら恋愛のいろはは変わらない。
お互いを愛していると認めて、その気持ちに素直になっただけだ。
もう少し時間をかけて、付き合いを深めてから結婚に向かってもいいんじゃないかという正論が、私の心にないわけではないし、不安もないわけじゃない。
けれど、正論を盾に自分のこれからを決めたいと思う以上に、竜也を好きになった気持ちを大切にしようと、それしか考えられない自分がいて。
「ま、いっか。竜也のこと、好きだから」
好きだという気持ちさえあれば、正論を論破できる強さと、自信が溢れてくる。
竜也が私を好きになってくれて、私もその気持ちに応えたいと思う。
それだけが恋愛を面白くするスパイスだ。
恋人を愛する気持ちと恋人から愛されている気持ちを兼ね備えれば、それはそれは無敵の恋愛ができるはず。
私と竜也が愛し合えば。
私は無敵のお姫様であり、竜也は無敵の王子様なんだ。
どんな恋人たちにとっても、それが、恋愛の醍醐味、なのかもしれない。