いきなり王子様
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それからの数日間、『工場説明会』と、『株主総会』の準備に追われていた。
株主総会を仕切るのは総務部だけれど、必要な書類やデータの中には経理部が作成している物も多く、準備の助っ人として総務部に行く機会が増える。
同期の真珠は総務部に在籍していて、まさに総会担当グループ。
お互い、部署の中では中堅扱いされるようになり任される業務の責任の重さや量の多さはかなりのもの。
特に真珠は優秀な仕事ぶりが評価されていて、全国のあらゆる部署が欲しいと言っている。
総務部に幾つか打診があると聞いているけれど、総務部は頑として断っている。
確かに、彼女がいなくなればかなりの痛手。
私も真珠が遠くの営業部にでも行ってしまうとなると、寂しいし。
でも、異動しろと言われれば、会社員である私達に選択肢なんてないに等しいから、断れないし。
真珠もそうだろう。
たとえ断れる状況だったとしても、断ってしまえば会社に居づらくなるかもしれないし。
言葉通り猫の手も借りたいほどの忙しさの中、時々真珠と打ち合わせをして、ふとそんな事を考えて。
真珠なら、そして竜也と付き合う前の私なら、何もかも会社からの指示通りに動いていたかもしれないけれど、もしもその指示によって私と竜也の付き合いが不安定になるのなら、従わないかもしれない。
『自分はこうしたい』という気持ちよりも『自分はこうした方がいい』
そんな呪縛にも似た思いを抱えていた私はもう、いない。
自分がこうしたいと、そしてそれが幸せにつながるという確固たる思いの下、生きていける。
竜也と生きていきたい。
一生側にいたい。
『自分はこうした方がいい』よりも『自分はこうしたい』
その思いが正論ではなくてもいいから、竜也と寄り添って生きていたい。