いきなり王子様
スマホをスーツのポケットにしまいながら、竜也は私を睨んだ。
「酔ったらかわいいなんて、どうして自慢げに教えられなきゃならないんだ?」
低い声で呟くと同時に、
「さ、車で来てるから行くぞ」
私の手を取り、早足で歩き出した。
「ちょ、ちょっと竜也、ここ会社だから、手を繋ぐのはまずいって」
引きずられるようにロビーを抜けて会社から出たけれど、竜也につかまれた手はそのまま。
というよりも、いわゆる恋人繋ぎでぎゅぎゅっと握られていて、離してもらえる雰囲気なんかはまるでない。
終業後すぐだから、ロビーにいた人も少なかったけれど、それでも私たちの様子を見られていたら、と思うと。
「は、恥ずかしい……」
思わず俯いてしまった。
そんな私の様子に竜也は小さくため息を吐いて。
「俺と一緒にいるのが恥ずかしい?」
「え?」
「周りに秘密の恋愛するわけ?お姫様って言われてちやほやされるまま、俺のことは内緒?」
見上げると、ほんの少し唇を尖らせた竜也の横顔が目に入る。
ただでさえ整っていて、どちらかと冷たい印象が強いその顔なのに、拗ねた感情が加わるとさらに目が離せない……なんて、惚れた弱みかな。
「私、お姫様って呼ばれてちやほやされてなんかないよ。それに、竜也のことを内緒にするとか秘密の恋愛とか、何も考えてない」
「だったら、なんでそんな焦るわけ?会社にばれてもいいんじゃないの?」
……予想外に、かなり、真剣に。
「拗ねてるの?」
そうとしか思えない竜也の横顔がなんだか愛しくて、思わずからかうように呟いた私。
この一週間、いつも私が竜也に振り回されてきたけれど、形勢逆転。
今は竜也の子供じみた表情と態度が可愛くて仕方がない。