いきなり王子様
私に挑むようなその声音は、私の答えを求めているのか疑問形で。
さっきまで私が照れていた想いを見透かしてもいるようだ。
「一週間、俺を忘れないように、目いっぱいの花を咲かせてやる。
奈々の体中に、な」
首筋に置かれていた竜也の指先に力が込められた。
「痛いっ」
竜也の顔が痛みを確認するように近づく。
「続きは俺の部屋で」
くすくすと笑った竜也は、期待しているところ、悪いな、とからかいながら私の体から離れると運転席に体を戻した。
「あ、三橋さんだけど、今回の新商品のプロジェクトに彼も参加してるから、かわいがってもらってたんだ。なかなか鋭い男だな」
「え?プロジェクト……って、三橋さんが?だって、設計でもないのに」
驚く私に、竜也はくすりと笑って。
「設計して、製造して、広告うって、販売。そのどの過程にも莫大な費用がかかるんだ。経理部だけではない、宣伝部も総務部も。設計部以外からもメンバーが集められていたんだよ。三橋さんもその一人。まあ、極秘だから奈々が知らなくても当然だけど」
「そ、そうだったんだ……」
同じ部署で、一緒に仕事をする機会も多いのに、三橋さんがそんな大きなプロジェクトに参加していたなんて、全く気付かなかった。
確かに仕事はそつなくこなすし、できる人だと思っていたけれど、全社的なプロジェクトにに参加するほどの人だとは思わなかった。
冗談ばかり言ってるし、いつも飄々としているその様子からは全く、だ。
「水曜日だったかな、三橋さん工場に来たんだけど、俺を見た瞬間思い出したように『奈々のたつやって、もしかしたら甲野の事か?』って大声で叫ばれたよ。おかげで、仕事がやりづらくて仕方なかった」
「奈々の竜也って、それ、えっと……ごめん」
思わず謝る私に、竜也はのどの奥を震わせて。
「いや、本社のお姫様は俺のもんだって笑って、いい気分だった。奈々を泣かせたらぶん殴るって三橋さんに凄まれたのは計算外だったけど」
「凄まれた……?」
「そ。俺の大切な奈々を必ず幸せにしろって。……かなり本気で」
「嘘……」
「まあ、言われるまでもないけどな。幸せにしますって、ちゃんと言っておいたから」
私を安心させるような声が私の心にすっと入ってきた。
そして、この人と結婚するんだな、とようやく実感する事ができた。