いきなり王子様
* * *
車は順調に走り、目的地に着いたのは18時半。
「良かった、面会時間に間に合った」
19時まで面会できると聞いて、急いで来たのは璃乃ちゃんが入院している病院。
水曜日に無事に手術を終えた璃乃ちゃんは、病室で絵を描きながら元気にしていた。
一週間ほどで退院できるらしいけれど、お母さんに甘えている璃乃ちゃんは本当に嬉しそうで、このまま病院でお母さんを独り占めしたい気持ちを隠そうともしていなかった。
璃乃ちゃんのお母さんも、無事に終わった手術に安堵して、その表情はとても柔らかかった。
ずっと璃乃ちゃんに負い目を感じていたに違いない心中は察するに余りあるけれど、ようやく、その重さから解放されたんだろう。
そして、
「璃久のサッカーの試合が再来週あるの。それには家族みんなで応援に行くから竜也も奈々ちゃんも、そして美散ちゃんも良かったら来てね」
面会時間が過ぎて、帰ろうとする私達に声をかけてくれた。
「ああ、都合が合えば行ってもいいけど、俺と奈々も色々忙しいんだ」
「あーあ。奈々ちゃんもこんな腹黒い弟で本当にいいの?逃げるならいまのうちだからね」
「うるせー。余計な事言うなよ」
「ふふっ。腹黒いし強引だけど、一旦懐に入ったらとことん大切にしてくれるから、大丈夫よ。仲良くしてやって。一生、お願いね」
私は璃乃ちゃんのお母さんのその言葉に大きく頷いた。
一生、という言葉には重みを感じて身震いするほど。
そして、そんな私達を見ていたのは。
「この間お店に来てくれた時から予感はあったけど、あっという間に結婚を決めたのね。おめでたでもないって言うし、本当、縁があったのね」
竜也の背中をぽんぽん叩きながら、からかうような声をあげた美散さんだった。
偶然璃乃ちゃんのお見舞いに来ていた美散さんと病室で会った時、少しだけ緊張したけれど。
「あのバカ兄貴が余計なことを言ったみたいで、ごめんなさいね。
私、ヤスがいればそれだけで幸せなのに、本当、昔から私のこととなると心配し過ぎなのよ」
竜也よりもまず私に笑顔を向けてくれた美散さんが、ため息をつきながら言葉をこぼした。
肩を落とすその様子を見ていると、まるでそれは私自身の姿のようで。
「私も、バカ兄貴がいるから、よーくわかる。それも、二人もいるから大変」
私の口から思わず出た言葉をきっかけに、一気に美散さんとの距離が縮まった。