いきなり王子様
私の胸の前で交差された竜也の手にそっと私の手を重ねて、ゆっくりと撫でた。
しばらくその感触を楽しんだ後、少し強引に私の手を差し入れて。
「ふふっ。恋人つなぎ」
手を繋いでぎゅっと力を込めた。
最初は私のなすがままだった竜也だけど、私の力に負けないほどの力で握り返してくれた。
私の手よりもずっと大きなその手に包まれて、背中にも竜也の体温が広がっていて、そして顔をそっと後ろに向けると。
「なんだよ。俺をからかって、面白いか?」
一目で拗ねているとわかる表情の竜也が唇を尖らせていた。
ぷいっと横を向く子供みたいな仕草もオプションでついてきて。
この部屋にきてからずっと続いていた緊張感もようやくゼロになった私は、いつになく余裕あふれる笑顔を作って。
「大切な人は、何人もいるけど、惚れてるのは、竜也だけだからね」
以前、竜也が美散さんとの関係を私に説明してくれた時の言葉をそのままお返し。
私が美散さんと竜也の関係に切なさを感じたのと同じように、竜也も少しだけ切なさを感じてくれればいいな、と思いながら。
そしてもちろん妬いてくれればいいな、と期待しながら。
拗ねている竜也の反応を待っていると。
「くそっ。早く結婚して一緒に暮らそう。俺、本社に異動願い出してもいい」
叫ぶような言葉を落とされて、同時に私の体は竜也の体に取り込まれた。
背後からかぶさるように抱きしめられた私は窒息しそうなほどの力を感じて何度か咳こんだ。
それでも竜也の腕の力が緩む事はなくて、そのあまりの激しさに驚いた。
意地悪な事、言い過ぎたかな。
ちょっと後悔。
「竜也、えっと、私が好きなのは竜也だけだから……」
苦しい呼吸の中、そう呟くと。
「当たり前だ」
「だったら、ちょっと離して、苦しいよ」
「……だったら、すぐにでも結婚……」
「そ、それは、無理ー」
私の言葉に『ちっ』と舌打ちした竜也は、更に私を抱きしめる手に力を入れて。
「結婚するって言うまで抱きつぶす」
「ほ、本気……?」
その声音の強さに怯える私に、にやりと笑顔を向けた竜也は、私の膝の下に腕を差し入れると、軽々抱き上げて。
「抱きつぶすなら、ベッドだろ」
暴れる私をものともせず、寝室へと移動し。
そして。
宣言通り、その晩私は抱きつぶされて。
翌日は腰が砕けてベッドから出られなかった。