いきなり王子様
* * *
腰が砕けて立てないほど愛される事が、私の人生に起きるなんて夢にも思わなかった。
恋人と体を重ねることにそれほどの心地よさを感じた事がなかった私には、ありえない事だとも思っていた。
そして、それを不幸だとも思わなかったし望んだこともなかったのに、土曜日の殆どの時間を竜也の寝室のベッドで過ごした私は、妙に気持ちが明るくて、幸せを感じていた。
嫉妬という感情の処理に困った竜也は、自分の欲がおさまるまでとことん私を抱いた。
きっと今まで嫉妬というものに苦しんだことがなかったんだろうけれど、それにしても。
『恋愛に目覚めたばかりの高校生じゃないんだから。がむしゃらに私を襲わないでよ』
というよりも、経験が多い分、高校生よりたちが悪いかもしれない。
竜也は、ベッドに突っ伏して起き上がれない私に
『悪い。加減できなかった』
と何度も謝って、私の体をマッサージしてくれたけれど。
一晩中愛された体は竜也に触れられただけで敏感に反応してしまって、思わず漏れる吐息を我慢するだけで精一杯だった。
そして、ようやくベッドから起き上がって活動を始めたのは土曜の夕方で。
せっかく竜也の部屋に来ているというのに、手料理を披露することもできず。
その晩の夕飯はコンビニのお弁当だった。
二人でのんびりとコンビニまで手を繋いで歩くことに幸せを感じたのも初めてで、私までもが高校生のようにわくわくした。
手を繋ぎながら見上げた夜空には、郊外ならではの綺麗な星が幾つも輝いていて、思わず立ち止まり感動の呟きをもらした。
『早く結婚して、奈々と子供と一緒にこうして夜空を眺めたい』
ぽつりと呟いた竜也の言葉は私の心の深い場所に響き、そんな未来を早く手にしたいと星空に願った。
竜也と一緒に未来を紡いでいきたい。
そして、お互いを唯一の惚れた相手として共に暮らし、幸せに過ごしたい。
そっと隣を見上げると絡み合う視線。
その視線が私に伝える気持ちはきっと、私と同じ気持ち。
竜也も私と紡ぐ幸せな未来を願っていると、教えてくれた。