いきなり王子様
「え?どうしてまた大通りに出たの?私の家、こっちじゃないんだけど」
止まる気配のない車に驚いた私は、慌てて身を起こした。
流れていく景色は、どんどん見慣れたものから離れていき、こんな時に限って信号はずっと青で、それを理由に車がスピードを落とすこともない。
「ねえ、甲野くん、どうしたのよ」
肩を落として呟くと、相変わらず不機嫌な声が返ってくる。
「奈々が家を教えないからだろ?俺に知られるとまずいわけ?
もしかして、男と住んでるとか?」
「はあ?」
「まあ、それだけ可愛けりゃ、本社の男どもが放っておくわけないよな。
俺は工場勤務で会う機会も滅多にないし、曖昧に笑ってたらそのうち俺の気持ちも冷めるって思ってるんだろ?」
「ど、どうしてそんな話になるのよ、私に男なんていないし、部屋にいるわけないでしょ」
甲野くんの見当違いな言葉にいらっときた私は、思わず大きな声をあげた。
本当、どうしてそんな発想ができるのかわからないし、どれだけ私が気分を悪くするかなんてわかってない。
「それにね、確かに本社の男性の中には私を気に入ってくれる人もいるけど、私のこの男前で短気な性格を知ったらみんな逃げていくの。
だから、妙な事を言って勝手に腹を立てないで」
ふん、と顔をそむけて、ただまっすぐに前を見ながら、勢いよく体を助手席に預けた。
私を男好きな女だと思っているらしい甲野くんに、かなりのショックを受けている自分が、何だか切ない。
この数時間一緒にいて、それなりにいい雰囲気にもなったし、ましてや
『遠距離恋愛しよう』
なんて言ってたくせに。
本当、私の事を振り回して右往左往させて、一体どうしようっていうんだろう。