いきなり王子様
二人が交わしていた言葉や視線を見れば、それはあまりにも歴然としていて揺るぎないものだとわかった。
それでも心のどこかで、それは私の早とちりなんじゃないかと期待していたのかもしれない。
それでもやっぱり早とちりではなかったようで、美散さんは甲野くんにとっては
『大切な人』だとはっきり言われた。
私には入り込めない特別な関係だ。
私の事を、『惚れてる女』だと言われても、だからと言って私が美散さん以上の存在ではないのは確かだから、嬉しいとも思えない。
逆に、複雑で切ない。
今日初めて甲野くんとちゃんとした会話を成立させ、二人きりで過ごす時間を持ったばかりなのに、甲野くんが自ら望んで、私と愛ある関係を築こうなんて事を本気で言うわけないのに。
そして、甲野くんが私とのこれからを真面目に考えてくれていると、どこかで信じてしまったから、大きなショックを受けて。
熱くなる瞳の奥を、どうする事もできないんだ。
泣くなんて、ずるい事はしたくない。
甲野くんが美散さんを好きなら仕方がないし、人妻である美散さんを好きになって苦しいに違いないのに。
もしかしたら、その苦しみから逃れたくて私に甘い言葉をかけたのかもしれない。
たまたま今日工場で会った私が、それなりに甲野くんの理想の女の子の範疇に入ったのかもしれないし、誰でも良かっただけなのかもしれない。
きっと、そうだ。