いきなり王子様

私を本気で求めたわけじゃないだろうし、甲野くんの美散さんへの苦しい気持ちは察するに余りある。

だから甲野くんを責めるなんて、できない。

何度か大きく瞬きをして、流れそうになる涙をこらえていると、運転席から伸びた手が、膝の上でぎゅっと握っていた私の手の上に置かれた。

「なあ、またバカな妄想で自分を悲劇のヒロインに仕立ててるだろ?」

甲野くんはくくっと喉の奥を震わせたかと思うと、

「奈々って、思っていた以上に面白いオンナだな。
それに、勝手に色々想像して落ち込んで泣くほど、俺の事が気に入ったのか?」

私の切なさ溢れる内情を無視して軽やかに笑う隣のオトコは、嬉しそうに声をあげた。

そして、私の手の上に置かれた甲野くんの指先が、焦らすように私の手を撫でた。



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