いきなり王子様


「ふーん」

私の荒い声にも緩い反応が返ってきて、なんだか物足りない。

どうして私の言葉を簡単に流してしまうんだろう。

美散さんとの関係も気持ちもはっきり言わないし、ただ大切だとしか教えてくれなくて。

そして私の気持ちを自分に向けさせようともするし。

甲野くんの真意はどこにあるのか、そして私には何を求めているのか見当もつかない。

「私、甲野くんが何を考えていて何をしたいのか全然わかんないよ」

大きな声とため息。

車内に満ちる私の不機嫌な感情。

飄々としている甲野くんの様子も見ていてほんといらいらする。

どこに向かっているのかもわからない車の中で、もういいや、といつもの短気を起こした私は、甲野くんから視線をそらして、そのまま助手席の窓から流れる景色に意識を向けた。

とっくに暗闇に包まれている住宅街は、時折明るい玄関の明かりが私達を照らすだけで、特に見るものなんてなかったけど。

半分意地になっている私は、じっと顔を外に向けたまま黙り込んでいた。

すると、ゆっくりと車は減速し、気付けば見知らぬ空地で止まった。

「え?」

きょろきょろと辺りを見回すけれど、ここがどこかわからない。

空地の周囲に並ぶ大きな家が目に入るだけだ。

「ここって、どこ?」

心細げな私の声に甲野くんは何も言わず、返ってきたのは

『カチッ』

という音。

< 47 / 228 >

この作品をシェア

pagetop