いきなり王子様
「ふーん」
私の荒い声にも緩い反応が返ってきて、なんだか物足りない。
どうして私の言葉を簡単に流してしまうんだろう。
美散さんとの関係も気持ちもはっきり言わないし、ただ大切だとしか教えてくれなくて。
そして私の気持ちを自分に向けさせようともするし。
甲野くんの真意はどこにあるのか、そして私には何を求めているのか見当もつかない。
「私、甲野くんが何を考えていて何をしたいのか全然わかんないよ」
大きな声とため息。
車内に満ちる私の不機嫌な感情。
飄々としている甲野くんの様子も見ていてほんといらいらする。
どこに向かっているのかもわからない車の中で、もういいや、といつもの短気を起こした私は、甲野くんから視線をそらして、そのまま助手席の窓から流れる景色に意識を向けた。
とっくに暗闇に包まれている住宅街は、時折明るい玄関の明かりが私達を照らすだけで、特に見るものなんてなかったけど。
半分意地になっている私は、じっと顔を外に向けたまま黙り込んでいた。
すると、ゆっくりと車は減速し、気付けば見知らぬ空地で止まった。
「え?」
きょろきょろと辺りを見回すけれど、ここがどこかわからない。
空地の周囲に並ぶ大きな家が目に入るだけだ。
「ここって、どこ?」
心細げな私の声に甲野くんは何も言わず、返ってきたのは
『カチッ』
という音。