いきなり王子様


「姉貴がそれ以上余計な事を言い続けるなら、このまま帰るぞ。
本当なら、奈々と二人で出かけたいところをこうして来てやったんだ。
おとなしく『お世話になります』とでも言ってろ」

「あ、あ、ごめんね。ついつい嬉しくって。
だって、竜也がここに女の子を連れてくるなんて美散ちゃん以外初めてなんだもん。テンションも上がるわよ」

竜也のお姉さんは、竜也から睨まれても平気らしく、私に向かって

「竜也って面食いだとは思ってたけど、本当に理想が高かったのね。
奈々ちゃんみたいに綺麗な女の子なら、竜也以外の男性からももてるでしょ」

私の顔をじーっと覗き込む瞳には、私への興味が露わになっていて、今にも食べられそうな勢い。

「奈々ちゃん、色白いのねー。お化粧もあんまりしてないのは、竜也の趣味?」

「あ、あのー」

「竜也って、化粧品とか香水の香りが嫌いでしょ?
だから、奈々ちゃんも薄化粧なの?
まつ毛だって、自前でしょ?マスカラもしてないし。
あれ?ベースと口紅だけ?」

「は、はい……そうです」

「えー、いいなあ、色々手をかけなくても綺麗なんて、贅沢ー」

お姉さんは、これでもか、というくらいに私の顔を見つめては、大きくため息を吐いた。

がくっと肩を落としたその様子には、なんだか自分が申し訳ない事でもしでかしたような気がしてどうしていいやらわからなくなった。

どうしようか、という気持ちを込めて竜也を見ると、呆れた顔をして眉を寄せていた。

「姉貴は、山ほどの化粧品買えるし、エステだって行きたい放題だろ?
奈々を贅沢だって言うんなら、金持ちの旦那を捕まえた姉貴の方がよっぽど贅沢できるだろ」

低い声でお姉さんに言い捨てながら、竜也はどんどん歩いていって、気づけば明るいリビングへと通されていた。



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