いきなり王子様
そこは、淡いピンクとグレーで統一されている明るい部屋だった。
大きく取られたガラス窓から差し込んでいる日光が、部屋いっぱいに広がって、温かく柔らかい雰囲気。
私の部屋がまるごと入ってしまいそうな広さには驚いたけれど、この家の外観を考えれば、当然かもしれない。
ソファや書棚、テレビ。
幾つか家具が配置されているけれど、そのどれもが高級そうに見えるのは、先入観からではないと思う。
そして、車を降りた時から気づいていたけれど。
「この家って、相模さんの設計ですか?」
ほぼ確信しながら、そう呟くと。
「あ、やっぱりわかったか?」
竜也は肩を竦めて笑った。
「うん。外観からそうかなって思ったけど、内装見てると、絶対だなって思った。
この部屋に使われてる腰壁の模様は、相模さんの奥様の葵さんがデザインしたものだし、不思議な台形の形をした玄関だって、相模さんの好みそうなものだし」
私は思い返すように呟いた。
経理部に所属している私には、相模さんが設計している場面に遭遇する事なんてないし、設計した図面を目にする機会だってないけれど。
自分が働いている会社の顔である相模さんの仕事ぶりには興味がある。
たとえ設計のいろはがわからなくても、相模さんが作り出す建築物の個性や温かさには触れていたいと思うから。
展示場や、社内に溢れている模型、カタログ。
相模さんの作る物には、意識して触れるようにしてきた。
「やっぱり、相模さんは別格だな」
部屋を見回している私に、竜也は悔しさをにじませた声で呟いた。
「……別格?」
竜也は、私の声を無視して、リビングの窓から庭を眺めていた。
お姉さんは、いつの間にか姿を消していて、気づけば私と竜也の二人きり。