いきなり王子様
「社内でさ、相模さんって名前と顔は誰もが知っていて、その才能や実績もすごいものだって認めているだろ?」
不意に話し出した竜也の横に立ち、そっと見上げると、庭に視線を向けながらもそれを見ているわけではないような。
あやふやな視線。
「だけど、奈々のように直接設計に携わる事がない部門の人間には、相模さんの設計だろうが、俺みたいな若造の設計だろうが違いがわかる人間は少ないんだ。
それどころか、住宅展示場に並んでる他社の商品との違いすらはっきりと知らない社員が多い」
「あ、そう、かも」
入社してすぐの研修で、わが社の商品の製造過程や設計、各ブランドの違いとかを叩き込まれるけれど、いざ配属された後は各々の業務を覚えていくことに必死で、設計に関係がない日々を送るにつれて、商品知識はなくなっていく。
私も、経理部というスタッフ部門に配属されて以降、とりたててわが社の商品の特徴や売れ筋、設計上の利点。
商品設計に関する事からは次第に疎くなっていった。
とはいっても、IR課という環境にいるせいで、投資家さんからの細かい質問にも答えられるようにと、積極的に勉強したり触れるようにしてきた。
新商品が出る前には工場に出向き試作棟を見て、投資家さんからの質問にも答えられるようにしなくてはいけないし、そうなると設計部との繋がりも強くなる。
カタログで紹介されている商品について、一つでも多くの知識を得られるように各部署に質問に回ったり。
設計担当ではないとは言っても、私はそれなりに商品知識を積んできたと自負している。
だからこそ、竜也のお姉さんの家が相模さんの設計だとわかったんだと思う。