114歳の美女
 映画なら、ここでキスシーン。


 (思い切って・・・。いや、こんなに大勢の見物客を目の前にして。やっぱり、そんな勇気は、僕にはない。お楽しみは、後まで取っておくか)


 智也はキスを諦めて、舞台の前方に広がる景観に目を遣った。



 真っ赤に燃える紅葉。
 薄く、赤く、もっと紅く。


 大自然の木の葉、一枚一枚が・・・。二人を祝福して、それぞれが精一杯に頬を真っ赤に染めている。


 (京都は何て美しいのだろう。この場所で最愛の人に求愛できる自分は、何て幸福者だろう)


 「ありがとう」


 智也はすべて生命ある物に感謝を言った。


 「うちかて同じ気持ちどす」


 ときも紅葉に目を遣りながら、小さな声で呟いた。

 二人は飽きるまで、美しい紅葉を眺めていた。そして、結婚を決意した余韻を、それぞれが噛み締めていた。





 
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