114歳の美女
 「どう言うて、初夜から泊まるのですか」


 しのぶが文句を言った。


 「あてを悪者にしたらよろし。姑からきつく言われているとか、何とか。あてを鬼にしてもよろしいで」


 「恨まれるやろな。嫌な役はいつも私に廻って来る。いややなあ」


 しのぶが寛道を見て、恨み言を言った。


 「あっ、大事な事を言い忘れるとこどした。寝る時は、くれぐれも川の字でな」

 「えっ、お義母さん、川の字ですか。そんな~殺生やわ」

 「悪い。悪いなあ」


 寛道がしのぶに向って両手を合わせ、拝み倒した。

 「う~ん。そこまで拝み倒されたら・・・。ときさんに子を生まさん為には・・・まあ、仕方ないか」

 しのぶが渋々、厭な役目を引き受けた。

 三人それぞれが、これから先の展開を読めずに、ただ何かに苛立っていた。


 川の字に、あと一つの注文。


 吉のはそれを引越し日までに、しのぶの機嫌のいい時を狙って言うつもりでいた。






 
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