114歳の美女
 「野球とサッカー、どちらがお好きどすか」


 花香が客に尋ねた。


 「女将は?」
 「私は断然サッカーどす」


 花香が笑顔で答えた。


 「何でや」

 客の濁声。


 「興奮度が大違い。はらはらどきどき。ボールがゴールに入った瞬間、エクスタシーを感じます」

 「野球かてホームラン打ってみ~、胸がすくで」

 「野球は静、サッカーは動。あては動が好きどす」


 智也は花香と客の話を肴に、焼酎を飲んでいた。


 (野球は静、サッカーは動か。じゃあ、あの川の字は何だ。苦か。いや、狂か。いや、笑か。川の字は笑だ。苦しみや、狂気を越えて、もうお笑いだ)


 智也は、同居生活を一言で表す単語を必死で考えていた。考えれば、考えるほど、智也の内に怒りが込み上げて来た。





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