114歳の美女
 文机の上には、2種類の写真立てが置かれている。
 

 二つ折りの写真立てには、セピア色になった古い2枚の写真が。


 (とき姉さんのお母さんとお父さんだろう)
 

 寛道の目を釘付けにしたのは、もうひとつのモノクロの写真だった。
 
 それは、時が5、6歳に見える写真で、背景に学校の正門らしき所が写っている。
 
 寛道は立ったまま、写真立てからその写真を抜き出した。


  裏を見る。
  書文字で、大正×年4月と記されている。


 「大正×年は・・・」


 寛道はざっと計算した。


 「明治45年が大正元年、とき姉さんが生まれたのは明治××年だから、生後20年前後か」


 「尋常小学校の入学は7歳位だろう」



 「生後20年で5、6歳に見えた訳だけど、よく入学出来たもんだな」



 「ご両親もきっと並々ならぬ苦労をしたんだろうな」

 「こら、おとき。親に散々苦労を掛けやがって」


 寛道が写真の裏に向って小さく呟いた。
 

 「そろそろ退散しないと。とき姉さんに見つかったら大変だ」
 

 寛道が写真を元に戻し、抜き足、差し足で、ときの部屋を出て行った。






 
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