114歳の美女
 「うちどすか。飲み屋ねえ・・・止めときますわ」

 ときがあっさりと断った。


 (飲み屋ねえ。その言い草は何。頭に来た。こちらが下手に出れば、付け上がりあがって。何が明治××年生まれだ。ざけんな)


 花香が心の中で喧嘩を売った。


 ときはビールを飲んでは水を飲む。水を飲んでは、ビールを飲むを繰り返している。それを見ていた花香が、ときのコップを鷲掴みにした。


 「ええい。いらいらする。ビールとはこういう風に飲むもんや」
と、ビールをコップに並々と注ぎ、一気にビールをあおった。


 ときが水を飲むには、大きな理由があった。
 その理由とは・・・。それは、永遠の秘密。
 

 ときは自分の尊厳に係わる飲み方に、難癖を付けられ怒った。


 「てめぇ。舐めやがって。客の飲み方に難癖を付けやがって。皺だらけの婆あが。ぶっ殺したろか。ワレ!」


 ときが派手に啖呵を切った。

 花香がときの余りの剣幕に一歩仰け反った。
 客とアルバイトの女の子が、唖然とした顔をしている。


 バあーン。


 ときが1000円札をカウンターに叩き付けると、威勢良く店を出て行った。


 「ああ、スカッとした。超気持ちええ」


 ときの沈んだ気持ちが一瞬、嘘のように消えていた。





 
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