114歳の美女
 (新しい空気を吸えば、新しい気持ちになれるかも・・・。沈んだ気持ちを京都に置いて、どこか知らない所へ行きたい)

 ときはいつか雑誌で見た神戸を、冒険の地に選んだ。

 「じゃ、決まり」

 俊介が立ち上がった。


 二人は『café昔昔』を出て、俊介が車を止めたコインパーキングへ。

 俊介は京都南ICから、名神高速道路に入った。時速100キロ前後で、一路神戸へ。

 「うち、京都から出るの、生まれて初めてどす」

 ときが車窓を見ながら言った。

 「本当ですか。信じられませんね」

 俊介が運転しながら答えた。

 「うちは京都でしか生きられへん、と思てましたから。うちにとっては、これは大冒険どす」

 「大冒険か。どうして大冒険しようと思ったのですか」

 淳也が前の車を追い越した。

 「定期入れにうちの写真が。それに・・・」
 「それに何ですか」


 「ぼんの気持ちが、嬉しかったからどす」


 いつしか二人の呼び名は、前に戻っていた。





< 268 / 321 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop