114歳の美女
 ときが家に帰り、自分の部屋へ。
 部屋に戻ってもときの左の乳房が、あの時の痛みをはっきりと覚えている。


 (あの痛みをもう一度味わってみたい)


 (赤ちゃんをこの手で抱いてみたい)



 新生児室で先と名付けた赤ちゃんを見たその時から、ときの母性本能に火が点いた。


 (抱きたい)


 (抱きたい)




 (赤ちゃんを抱きたい)




 ときはうわ言のように言って、部屋の中をさ迷っていた。


 (抱きたい)

 (ああ、抱いてみたい)



 (抱かせて!)



 母性本能が疼く。
 ときは赤ちゃんを抱きたくて、抱きたくてたまらなかった。



 「うちにも抱かせておくれやす。お願いや。お願いやから・・・抱かせて・・・おくれやす」



 ときが両手を合わせて、何かに熱烈に祈り出した。
 それが終わると、ときが走って部屋を出た。
 階段を一気に駆け下りて表に出ると、ときは公園に向って一目散に走り出した。






 
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