かくれんぼ、しよ?
「あ、あたし、注連縄をくぐる前に、おっきい犬みたいなの見たけど……それのことかな?見間違いかと思ったんだけどさ」
い、犬?それこそ何のことかわからず、ミクは変わらず首を傾げたままきょとんとしている。
――おれが言ったのは、注連縄をくぐってここに来る前に見た、グロテスクなバケモノ。
あれを見ていたのに、村に来てから見た死体やゾンビなんかを怖がった自分が不思議なくらい――あのバケモノは、恐怖そのものだった。
「それとは違うけど……まあ、見てないなら、いいんだけど……」
ゾンビがいる時点で危険なのだから、余計な恐怖を与える必要はないと思い、教えないでおくことにした。
まあ、吉越さんは喜びそうだけど……ミクは、怖がると思う。
「よーし、それじゃあ」
突然、吉越さんがベッドから立ち上がった。
「あたし、急いでるからさ!もう行かなきゃー」
「そういえば、急いでるって?行くって……どこに?」
おれの聞きたいことを、丸々ミクが訊いてくれた。
「あの人が帰ってくる前に、ちょっと借り物があってさ!行くっていうのは、もちろん夕霧村探検!こんなチャンス、二度とないかもしれないからねー」
……危機感とかは、ないのだろうか。この状況で探検だなんて、そのメンタルの強さを分けて欲しいくらいだ。
それと……
「あの人?」
再び、ミクがおれと同じ疑問を持った。
「あー、カンノさんだよ。あの人、ここから出るなってうるっさいんだもん」
「あ、ミユキちゃんも会ったんだね。カンノさんは、ミユキちゃんのこと心配してるんだと思うよ……?」
うんざりした表情を浮かべる吉越さんに、ミクが苦笑混じりに言った。
カンノさんとやらは、二人のことを助けてくれたみたいだな。
「とにかく、あたしはもう行くね!二人とも、また会えるといいねー!じゃね!」
吉越さんは部屋の隅に置いてある棚を漁りながらそれだけ言い残すと、出て行ってしまった。
棚から、借り物とやら――鍵のように見えたが、それを持っていった。
「い、行っちゃったね……」
呆れたような、困ったような表情でミクがおれを見る。
吉越さんは意外にも、嵐のような人だった。
肩をすくめて、先ほどまで吉越さんがそうしていたように、ベッドに腰掛ける。
ミクと、お互いこれまでのことを話し合った。