かくれんぼ、しよ?





男が次に足を止めたのは、一件の平屋の前。


玄関先に棍棒を乱雑に置くと、中へ入っていく。


「来ないのか?」


入っていいものか躊躇っていたら、男が言った。


「あ、じゃあ、おじゃまします」


玄関には、靴が揃えて並べられていて――それは、紛れもなく、ミクとマコトのものだった。



「これって!ミクとマコトがいるのか?」


「マコトとやらは知らないが靴があるならいるんじゃないのか。キリシマミクはいるはずだがな」


「やっぱ、追ってきたのか……無事だよな?」


「キリシマは無事だ」


この様子だと、マコトには会っていないんだな。



暗い廊下を進むと、ひとつの部屋の開口部からうっすらと明かりが差し込んでいた。


おれの前を歩く男の歩みが、その前に届いた、その時――





「やああああ!」


どこか気の抜けた、高い雄たけびのような声。


それと共に、男の顔面に、何かが振り降ろされる。


「あ、あぶな!」


思わず声を上げたが。


パシン、と小気味良い音を立てて、男は、振り下ろされたものを手のひらで受け止めた。



「随分、手荒い出迎えだな」


「あ、あれ!カンノさん!ご、ごごごめんなさいー!」


男が受け止めた、孫の手の先を握りしめていたのは――必死になって頭を下げる、ミクの姿。



「ミク!」


「あ!ユウイチくん!」


ぱあっと笑うミクは、とても嬉しそうだったけど――おれには、頭に被った鍋が気になって仕方なかった。


「ユウイチだって?」


ミクの後ろから出てきたのは、マコトだった。


「マコト!よかった、二人とも!」


よかったけど……こいつも、どうして鍋を被っているのか。どうして片手鍋を握りしめているのか。


……もはや、触れないほうがいい気さえする。




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