かくれんぼ、しよ?
「な――」
なんで、ここに……!
「アナタ、とっても、オイシソウ……!」
鬼の口から、ざらついた、どこか恍惚とした声色で、言葉が発された。
話せたのか、というか、なんだ、おいしそうだって?――冗談じゃない!
足の痛みも忘れ、瓦礫の隙間をくぐり抜けて、走った。
歪みが少なく開きそうな扉を見つけ、勢い良く開けて飛び込んだ。
慌てて鍵を締め、そのまま扉にもたれるように座り込んだ。
「はぁ、はぁ――」
心臓がいつもよりも早いスピードで脈を打つ。
この村に来てから、必要運動量の軽く一ヶ月分は走ったような気がする。
一息つくと、足がズキズキと痛むのに気付いた。
あれだけ走ったのだ。悪化したのだろう、脈を打つリズムと共に激痛が走る。
これ以上、走って逃げるのは無理そうだ。
しかし、鬼はきっとおれを追ってきている。
……今度こそ――食べられてしまうかもしれない。
くそ、なんでおればかり。
ミクは鬼が見えないようだし、ユウイチは鬼に会っていない様子だ。
――まあ、狙われるのがミクじゃなくてよかった。
そう前向きに捉えることにする。
扉越しの廊下を、鬼が徘徊しているかもしれない。足を引きずりながら、教室の奥へと移動した。
すると――廊下とは別の方向、おそらく準備室のようなものと思われる部屋へと繋がる扉が、ガンガンと、何者かに叩かれた。
まさか――鬼なのか。
こんなところに入ってこられては、どうすることもできない。
だからといって、逃げるにも、足が――。
固唾をのんで、机の陰に身を潜めながら、音を立てる扉を見つめていた。
やがて、扉は徐々にこちらへ傾き――バタンと音を立てて、壊れた。
舞い上がる埃の中には、鬼にしては小さい、ひとつの人影。