かくれんぼ、しよ?
「あれは――!」
おれとカンノさんが、音のした方へ同時に振り向いた――そこには、窓ガラスを突き破る、鬼の姿があった。
「ミツケタ!」
鬼は不気味な声で言い、にたりと口角をあげる。
――ガシャン!
腕と思われる箇所を振り上げ、隣の窓ガラスに振り下ろした。
いくら割ったところで、あの巨体では窓からは入ってこられない。
しかし、あの様子では……扉を突き破って来るのも時間の問題だ。
「くそ……!」
準備室へ繋がる扉への間には、カンノさん。廊下へ繋がる扉の向こうには、鬼。
加えて、この足では――逃げられそうにない。
「ちっ、入ってくる。おまえ、足痛めてるな?」
カンノさんが、おれに近付いてくる。
離れようとしたが、足が上手く動かず、体のバランスを崩して倒れてしまった。
「いて……」
そうしている間に、鬼は何やら叫びながら、扉を叩いている。扉は今にも壊れそうに音を上げている。
「逃げるぞ、一緒に来い」
カンノさんがおれに手を伸ばすと同時に――扉は音を立てて、倒れてしまった。
それを踏み越えて部屋に入ってきた鬼は、充血した目玉をぎょろりと動かし、こちらを見る。
「ネ、アナタ、ちょうだい?」
ゾクリと、悪寒が走る。
おれは、カンノさんの手を取って――そして。
「――おい、どういうつもりだ」
カンノさんの手と、机の脚を手錠で繋いだ。
「おれは、あんなバケモノに、食われるわけにはいかないんです……!」
おれはカンノさんに背を向け、準備室への扉へ、足を引きずりながら必死で走り出した。
――こんなところで死にたくない!
自分が何をしているかなんて、考えている余裕はない。
鬼は、見動きの取れないカンノさんの方へ狙いを定めたようで、ゆっくりとそちらへ這い寄っている。
「……おれには、綺麗な女にしか見えないんだがな」
部屋を出る前、カンノさんのひとり言が耳に届いた気がした。