かくれんぼ、しよ?





「あれは――!」


おれとカンノさんが、音のした方へ同時に振り向いた――そこには、窓ガラスを突き破る、鬼の姿があった。



「ミツケタ!」



鬼は不気味な声で言い、にたりと口角をあげる。


――ガシャン!


腕と思われる箇所を振り上げ、隣の窓ガラスに振り下ろした。



いくら割ったところで、あの巨体では窓からは入ってこられない。


しかし、あの様子では……扉を突き破って来るのも時間の問題だ。



「くそ……!」


準備室へ繋がる扉への間には、カンノさん。廊下へ繋がる扉の向こうには、鬼。


加えて、この足では――逃げられそうにない。



「ちっ、入ってくる。おまえ、足痛めてるな?」


カンノさんが、おれに近付いてくる。


離れようとしたが、足が上手く動かず、体のバランスを崩して倒れてしまった。



「いて……」


そうしている間に、鬼は何やら叫びながら、扉を叩いている。扉は今にも壊れそうに音を上げている。



「逃げるぞ、一緒に来い」


カンノさんがおれに手を伸ばすと同時に――扉は音を立てて、倒れてしまった。


それを踏み越えて部屋に入ってきた鬼は、充血した目玉をぎょろりと動かし、こちらを見る。



「ネ、アナタ、ちょうだい?」



ゾクリと、悪寒が走る。


おれは、カンノさんの手を取って――そして。





「――おい、どういうつもりだ」





カンノさんの手と、机の脚を手錠で繋いだ。


「おれは、あんなバケモノに、食われるわけにはいかないんです……!」


おれはカンノさんに背を向け、準備室への扉へ、足を引きずりながら必死で走り出した。



――こんなところで死にたくない!



自分が何をしているかなんて、考えている余裕はない。


鬼は、見動きの取れないカンノさんの方へ狙いを定めたようで、ゆっくりとそちらへ這い寄っている。





「……おれには、綺麗な女にしか見えないんだがな」



部屋を出る前、カンノさんのひとり言が耳に届いた気がした。




< 70 / 127 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop