かくれんぼ、しよ?
◇◇◇空白
「ったく、あの、クズめ……」
カンノは、なんとか手錠が外れないものかと、手を引いたり、机の脚を折ろうとしてみるが――それはかなわない。
『鬼』は、徐々にこちらへと迫ってきている。
「あなた、嫌い」
『鬼』は、憎悪に満ちた表情で吐き捨てるように言うと、ゆっくりと、腕を上げた。
それをカンノに向かって振り下ろす――すると、それに習ったかのように、小さな瓦礫が飛んだ。
それは、まるで刃のように、カンノを襲う。
「――っ!いい加減、勘弁してくれ……あいつには随分、優しいんだな?」
マコトが恐れた、返り血とは違う――自らの血液が、カンノの白衣を染めていく。
「あのこは、すき……食べたい」
『鬼』は、舌なめずりをした。
カンノは、止まらない血を見つめながら、マコトへの仕打ちとの違いに舌打ちをする。
「あいつだってとんだクズだぞ?おれにはわかるんだよ、同じ匂いがする」
「あなたは違う。コロさなきゃ……!」
――瞬間、『鬼』の雰囲気が変わった。
禍々しい雰囲気を醸し出し、カンノに今にも飛びかかりそうに身構えている。
「――仕方ない」
カンノは、親指の関節を自ら外し、手錠から手を抜いた。
激痛に顔が歪むが、気にする暇はない。
立ち上がり、『鬼』に向かい合う――
そして、次の瞬間。
乾いた銃声が、瓦礫の中にこだました。
「あ、ああ……」
左脚に弾丸をくらった『鬼』は、よろめき、膝から崩れ落ちる。
続けざまに、カンノは手にした拳銃の引き金を引いた。
二発目、三発目――
それらは腕と腿に命中し、四発目で、やっと、『鬼』の左胸を撃ち抜いた。
「慣れてないもんで、悪いな?苦しませて」
「ゆ、ユルさ、ない……!」
『鬼』は、ひとこと呪詛を言い残し、黒い霧となって――姿を消した。
「……ああ、聞き忘れた」
――鐘が鳴らない理由を。
……どうせ、また来るだろうから、問題ないがな。カンノは心の中で呟いた。
体中から、血が、滴り落ちる。手が痛む。
どこか懐かしいような痛みに顔をしかめながら、カンノはこん棒を拾い上げ、部屋を後にした。