かくれんぼ、しよ?
ふと、再び、場面が変わった。
辺りは暗く――木々が天に向かって伸びている。
ここは、見覚えがある……林の中だ。
視界には、鐘のあるやぐらを背後に、美人な女性がこちらを向いて立っている。
……あれ、これって、もしかして。
嫌な予感がする。
「悪い、待ったか、サツキ」
どうやら女性は、サツキというらしい。
「大丈夫よ。それよりどうしたの、こんなところに呼び出して」
「……言い辛いんだが……結婚したら――一緒に、この村を出ないか?」
なんだ、恋人か。
しかし、プロポーズ同然のセリフを受けたサツキは、喜ぶどころか――怒りに満ちた表情を浮かべた。
「ケンジさん、あなた、何言ってるの!?この村を出るなんて、絶対に嫌よ!」
「まあ待て――そう言われると思ったよ。でもなサツキ、よく考えろ、この村の状況を。……流行病の治療法も予防法も見つからない。それに加えて子どもばかり馬鹿みたいに増やしているんだ――いずれ、この村は滅びる」
視界の主――ケンジとやらが言い切ったが早いか、左頬に、痛みを感じた。
サツキから、平手打ちが飛んできたのだ。……おれは悪くないのに、痛覚はあるなんて、あんまりだ。鈍痛が続く。
「滅びるだなんて言わないで!」
「――おれは、お前のために言っているんだ!おれも、おまえも、ミヅキだって、いつ病にかかるかわからないんだぞ!」
……ミヅキ?今、ミヅキって言ったか?
サツキとケンジは、ミヅキと関係がある人物なのだろうか。
「……わかったような口聞いて、何なのよ……」
興奮していたのが収まったのか、サツキは、冷たい眼差しをこちらに向けた。
「よそ者のくせに」
その一言が耳に入った瞬間、今まではわからなかった、視界の主の感情がおれの心に流れ込んでくるのを感じた。
……突発的な、怒りの感情。
ああ、やっぱり、嫌な予感は当たっていた。