かくれんぼ、しよ?





サツキを殴る。人を殴る感覚は、初めてだ。殴る方も、こんなに痛いんだな。


……やめろ、やめろ、やめろ……思ったところで、おれの自由がきかないのはわかっている。



数回殴ったところで、サツキは地面に倒れた。


息をつかせる間もなく、サツキに馬乗りになる。


そして――細い首に手をかけた。


徐々に力をこめていく、嫌な感覚だ。こんなの、何度も味わうものじゃない。


不思議と、やけに冷静に見つめているうちに――それは、終わった。



サツキは、死んだ。


ケンジが、殺した。





……おれが鐘の前で見たのと、同じワンシーン。だったら、誰か子どもが見ているはずだ。


ケンジは、辺りを見回すようなことはしない。きっと、見られているなんて思っていない。



「……おれは、がんばったんだ、お前らのために……!」



ケンジの呟き声が聞こえて――辺りの光景はまた、変わった。





「先生、サツキはやはり、見つかりません……」


女性が言った。 ここは、初老の男性と話していた部屋だ。


「そうですか……それと、ミヅキのことですが」


サツキは、表では行方不明ということになっているのだろうが――「そうですか」って……お前が殺したんだろう。そう思うが、声になるはずもない。



「はい、ミヅキですね……実はそのことで来たんです!サツキは、あの子の母親代わりだったんです……姉妹で力を合わせて、生きていたんですよ……」


なるほど、ミヅキはサツキの妹だったのか。


「ええ、存じてます。ミヅキは――おれが預かります……そのつもりでしょう?」


「そう仰ってくれると、思いました!ミヅキ、おいで」



女性が呼ぶと、部屋の入り口の方から、ミヅキがひょこりと顔を出した。


……自分が預けられるのが、姉を殺した奴だなんて、微塵も思うわけもないよな。


泣きはらした後であることが読み取れる充血した瞳が、ひどく痛々しい。



「先生、こんにちは……」


「こんにちは。……これからは、おれを父親代わりだと思っていい。よろしくな」


ミヅキは何も言わず、小さな手でケンジと握手を交わした。




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