かくれんぼ、しよ?





「先生、ありがとうございました……!本当に、治ってよかった……」


ここは、二度ほど見た、部屋の中だ。


目の前で、女性が子どもの頭を撫でながら、こちらに向かって礼を言っている。


「いえ、お大事に」



「それにしても――」


女性と子どもを見送ると、背後から声がした。


振り向くと、あのムカつくじいさんの姿があった。



「あれだけ探しても治療法が見つからなかったのに、よく治せたもんだ。どうやったんだ?」


「……いい薬を、見つけました」


なんだ、流行病の治療法は見つかっていたのか?……だったら、どうして村は滅びたんだろうか。



「そうか、それは結構!これからも精進してくれ、頼りにしてるぞ!」


嬉々とした顔で、エラそーに言った。やっぱりムカつく。掌返しもいいところだ。


「はい、多くの人に治療を施せるように――薬を用意します」


「ぜひとも、そうしてくれ」



ご機嫌で部屋を出ていくじいさんを見送ると、ケンジは自分の手のひらを見つめる。


「今日も、クスリを獲らなければ……」


呟いて、空を握りしめた。



――薬を『とる』?妙な言い方だ。


薬草とか、そういうものだろうか。……考えたところで、おれにはわからない。


ただ、変わりゆく光景に、身を委ねる。




< 89 / 127 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop