かくれんぼ、しよ?
棍棒を、振り下ろすことができない。
「お父さん!」
状況が飲み込めないのか、カンノが静止したままでいると、子どもはカンノの後ろへ走っていってしまった。
「先生、鬼は、あなただったんですね?」
背後から聞こえる、男性の声。
「……ふっ」
カンノは小さく笑って、棍棒を握っていた手を離した。
男性も同じく手を離し、棍棒が、地面に落ちる。
ゆっくり振り向くと、そこには中年の男性、そこに寄り添う子ども、それから、あのじいさんの姿。
「何が、村が滅びるだ……この人殺しめ!今すぐに処刑する!」
じいさんのそんな声を合図に、建物の陰から数人の男性の姿が現れた。
背後を一瞥すると、そちらからも、同じように数人が向かってきていた。
カンノは観念したように、両手を上げる。
「一日だけ、待ってくれないか……ミヅキが、病にかかったんだ」
「知らん!それに、人殺しが世話した娘など、ロクに育つわけがない!かえって好都合じゃないか!」
そんな言葉を聞くと――カンノは無抵抗だった態度を豹変させ、こん棒を拾い上げると、じいさんの元へ走り出した。
「な――つ、捕まえろ!」
じいさんが声を荒げたのが早いか、カンノがじいさんを蹴り飛ばしたのが早いか――じいさんの体は勢いよく地面に倒れた。
「ミヅキは関係ない……あの子は、守ってやってくれ」
じいさんに、こん棒を向けながら言った。
「守るわけ無いだろう、この人殺し!おい、こいつをさっさと引き離せ!」
男性たちが、数人がかりでカンノを捕まえるべく近付いた。
しかし、カンノはこん棒を振り回し、体術を駆使し、向かってくる相手をなぎ倒していく。
「ミヅキを傷付けるというなら、おれは、捕まるわけにはいかない――!」
――それでも、それも長くは続かなかった。