珈琲の香り
洋風のお墓が並ぶ中を、迷うことなく進む涼さん。

その背中が少し丸くなってる。

悲しい……よね……

辛い……よね……

今の私なんかよりずっと……

心から愛した人を失うこと……

私の想像以上に辛いことだと思う。




その辛さも、悲しさもすべて背負ったあなたを好きになりました。

無口で、無愛想で、それでも時折見せてくれる笑顔が優しくて……

そんな涼さんを好きになりました。

私じゃ風花さんの代わりにはなれないけど、それでもあなたを好きでいていいですか?




そんなことを思う。

涼さんは優しいからきっと、『好きにしろ』って言うのかな?

叶わない想いでも、想い続けるのは自由だと……



「………ここだ。」

「ここ………」


小高い丘の頂上。

風花さんのお墓は、他のどのお墓より空が近い。


「……蒼から聞いたか?」

「はい……蒼くんのお姉さんだと……交通事故だったと…」

「……そうか」



そう言うと、涼さんは風花さんのお墓に手を合わせた。


やっぱり……その背中は微かに震えていて、今でも失った辛さに耐えているように見えた。


< 140 / 174 >

この作品をシェア

pagetop