珈琲の香り
そんな人に、私が敵うわけない。

辛くて、悲しくて、『もう聞きたくない』って思う。

だけど……知りたい。

風花さんがどんな人だったのか。

どんな風に、二人で過ごしてきたのか。

知りたい……


そして、風花さんのような女性になりたい。

強いふり……じゃなく、本当に強い人になりたい……


「お義父さんもお義母さんも、反対はしたんだ。

それでも風花はやめなくて…結局二人が折れる形でバイトを続けて……

風花目当てのお客もいたっけ。」

「綺麗な方だったんですね」

「どうだろうな。

綺麗だったのかもしれない。

何が楽しいのか、いつも笑ってて……

樹みたいな女だったよ……」

「……すごく……愛してたんですね……」

「ああ……」


夏の日差しがジリジリと地面を照らす。

その遠くに、ぼんやりと二人の影が浮かぶ。



白いふんわりとしたワンピースを着た女性と、ジーンズを履いた男性が、仲良さそうに笑いあってる。


……きっと、涼さんと風花さんだ……


あんな風に笑い合ってたんだ。

幸せそうに、楽しそうに……

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