花嫁に読むラブレター
カーヤがそのままにしていた水を止め、レナータは穏やかな笑顔をたたえてマイアたちのいる場所までやってきた。
「ええ、マイアちゃんと、おやつをこれから作ろうと思ってるのよ」
「まあ、それは素敵ですね。もちろん、私たちも頂けるのですよね?」
レナータは目元をいたずらっぽく微笑ませた。「奥様のお作りになるお菓子はとても美味しいですから」
床を這いつくばっていたカーヤが、目をきらきらさせて叫ぶように言う。「おやつ! 奥様、わたくしも食べたいです!」
床の上に座ったまま、指を組んで胸の前にかかげる。まるで神様でも崇めるようなカーヤの姿に、フィーネはにっこりと微笑みながら頷く。
「もちろんみんなで食べましょう。でもカーヤ、庭の水遣りを今朝忘れたでしょう。それが終わってからね」
庭、と軽く言っているが、もしかして先日マイアが通ってきた場所全体をさすのだとしたらとんでもない広さだ。これからフィーネと二人で作るという「おやつ」がどんなものなのか知らないが、ひとりで水遣りをするのだとしたら間に合わないのではないだろうか。
マイアがそんなことをふと思った矢先、カーヤは意外なほど素早い動きで立ち上がり、背筋を伸ばして「今からダッシュで終わらせて参ります!」と手振り身振りをつけた後、駆けだした。
結び紐は見つけられなかったのか、ほどけたままの髪を揺らしながらカーヤの後姿が小さくなっていく。
そんなカーヤを見守りながら、フィーネもレナータも、くすくすと親しみのある笑みをこぼしていた。
マイアもいつの間にか笑みを浮かべ、温かいな、と思った。