花嫁に読むラブレター

 フィーネと二人でクッキーを作っていた時間は、本当に楽しかった。

 生バターと粉をひたすらに捏ねて、可愛い型で抜いた生地を焼く。マリーおばさんがよく作ってくれていた、丸めただけのでこぼこで乱暴なクッキーとは違って上品なクッキーだ。バターの違いなのか、焼いている途中の匂いも全然違った。その間、マイアはわくわくしていた。たまにオーブンを覗いては、生地の表面がうっすらときつね色に変わっていく様子を見て顔をぱっと輝かせた。焼きあがったときに開けたオーブンから漂ってくる甘い香りをかぐだけで、とても幸せな気持ちに満たされる。

 フィーネが淹れてくれた紅茶と一緒に食べたクッキーは、心がどこかに飛んでしまいそうなほど美味しかった。わざと数枚残して、部屋に持ち帰ってきたほどである。

 しかし、そんな浮かれたマイアを待ち受けていたのは、現実だ。子供の頃、目を輝かせて夢見た童話の世界じゃない。甘い香りにふらふらと足を運んだ場所は、とても気持ちが良くて幸せな生活だけが待っている、夢の城ではなかった。
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