花嫁に読むラブレター

(……ステイルにとって、きっと、なんてことはなかったのね)

 深い意味なんてない、ただの気まぐれ。

 マリーおばさんが、毎日作っている麦の粥に、「今日は木の実を入れてみようかねえ」って言うのと同じ。なんとなく、そのときの気分で出た行動だったのかもしれない。マイアにとって、それはそれは重要だと思っていても、ステイルにとってはそんなもの。

 なんだか、自分だけ気にしているという思いから怒りを覚えたものだが、それすらも通り越して虚しくなった。

 それでも考えずにはいられない自分に憐れみを感じた。

 隣にユンがいれば、忘れていられるのに。独りきりで広い部屋にいると落ち着かないのもあり、つい昔の思い出に浸ってしまう。まだアルヴィオン家として過ごし始めて、一週間ほどしか経っていないのだから無理もない。

 それに――

「マイアさん」

「わっ! い、いつからそこにいたのよ!」

 突然聞こえた声に驚き、耳たぶに触れた温かい吐息に頬を赤らめた。
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