花嫁に読むラブレター

 マイアは慌てて椅子から立ち上がり、振り返ってユンを見ると、視界の奥のほうにある部屋の扉が開いているのに気づいた。ユンが隣にいるということは、扉をくぐってきたなんて当たり前のはずなのだが、扉が開いた気配すら感じなかったマイアはさらに驚いた。

「そんなに集中して何してたの? ――手紙?」

 机の上に並べられた封書を見て、ユンの表情がかすかに動いた。

 不快と不安がいりまじったような、複雑な色をユンの瞳に見た。――ように見えたのは気のせいなのかもしれない。ユンと目が合ったときは、いつものユンだった。雲がゆっくり空を漂う様子にも似たおだやかさで、見る者に落ち着きを与えてくれる。

 しかしマイアの鼓動は早い。

 一瞬見せたユンの表情が、マイアに焦燥感を与えた。

 動揺を隠そうと、マイアは頷き早口に言う。

「うん、マリーおばさんとシェリィとステイルから。みんな元気そうよ。でもね、シェリィの手紙は手紙っていうよりも、らくがきね」

 何気ないふうを装って言ったマイアに、ユンも笑顔で応えて頷く。
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