花嫁に読むラブレター
「……あの、えっと」
ユンが唇を青くしたまま何か伝えようとしているのだろうが、うまく言葉にならないまま呻くような呟きが唇から洩れるだけだった。
マイアは、少し前までユンに抱いていた不満がゆっくり溶けていくのを感じた。小動物みたいだな。と、マイアは思った。ふわふわした髪の毛や、あわただしい動作のひとつひとつが、栗鼠みたい。目が合うと、長いまつげに縁どられた大きな瞳がびっくりしたようにさらに大きく開かれ、顔を真っ赤にして、初恋を覚えたばかりの少女ような笑顔をマイアに向ける。
こんな素直そうな方が、経済力を武器に結婚を求めようなんて思うはずがない。
他人の行為を素直に受け取れない屈折した考え方を、改めて自覚したマイアにまたしても羞恥心が襲った。顔が火照りだすのがわかる。
「――あの。果物、ありがとうございます」
マイアはそんな醜い自分を必死に言葉の裏に隠した。気づかれないよう、作り物の笑顔を浮かべる。