花嫁に読むラブレター

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 花の香りがただよう庭園には、鮮やかな朱色の卓布がかけられた食卓がいくつも並べられている。銀の器に盛られたさまざまな食事からあがる湯気が空に昇っていき、レナータとカーヤは忙しそうに庭園を走り回っていた。彼女らが隣をすれ違うたびに、律儀に頭をさげる様子を不思議な気持ちでマイアは見ていた。
アルヴィオン家に来てから随分と時が経ったというのに、いまだ慣れない。

 最初の頃は、そのことで悩んだ。

 廊下ですれ違ったとき、食事のとき、日々の生活の中で訪れる些細なふれあいに、全く慣れず、「他人」という認識がマイアの頭から出ていってくれないのだ。懸命に、家族として接しようとすればするほど、夜も眠れないくらい心が疲れた。明日はもっとうまい返事ができるようにしなくちゃ。不自然な笑顔じゃないかしら……。考えれば考えるほど、目は冴えていく。

 だが、あるとき、突然に思いを吹っ切った。

 無理に家族になろうと頑張るから疲れるのならば、いっそのこと他人として一緒に暮らせばいいのだ。

 ユンには決して言えない決意だが、そう決めたことで、マイアの胸に落ちていた重石が一瞬にして消えた。適度な距離を置いて、それでいて友達のように仲を深めよう。

 今でも慣れないことのほうが多い。それでも最初のころのような焦燥もなければ、諦めにも似た感情が、マイアをなんとかこの場に立たせていた。
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