花嫁に読むラブレター

 なるべくレナータたちと視線が合わないよう、目立たない場所に移動しながら、マイアは木陰に落ち着くと小さく息を吐いた。

 自分とユンのためにとせっかく催してくれたパーティーも、なんだか心から楽しめなかった。以前のマイアなら、肉の香ばしい匂いを嗅ぎつけただけで、跳ねるように大喜びしたというのに。今は水一滴すら口にする気は起らなかった。

「楽しくなくとも、楽しそうにするのが大人の女ってもんだよ」

 聞き慣れた野太い声に振り向くと、マリーおばさんが無理やりにグラスを手渡してきた。

 マイアは、グラスの中で揺れる液体を見つめながら、眉根を寄せた。

「……わたし、そんなにつまらなさそうにしてた?」
「そりゃあもう、ひとめでわかるほどにはね」

 懐かしい、母とも呼べるマリーおばさんの姿を見ても気分が上がらない理由を、マイアはよく知っていた。しかし、認めてしまえば、アルヴィオンで生活していくのがさらに苦しくなる。

「――ステイルがいないのが、そんなに残念だったのかい?」

 マイアは無言でグラスを傾け、口に含んだ。

 柑橘系の、甘酸っぱさが全身を駆けるように流れていく。

「あんたは昔っからわかりやすいからねえ」

 俯きながら、グラスをゆらゆら傾けているマイアに視線をやると、マリーおばさんは苦笑しながら言った。

「そんなにステイルが好きだったんなら、嫁がなければよかったんじゃないのかい」

「別にそんなんじゃないわ。それに、おばさんだって結婚すること勧めてきたじゃない」
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